鴎外荘・会食編

外飯の話
スポンサーリンク

2019年春。77歳になるぽんこつ父の喜寿祝いに美味しいものいただきました。2020年の5月末に閉業した上野・水月ホテルについては下記リンクからどうぞ。

上野・水月ホテルが閉業したニュース
2019年の春、父の喜寿を祝う会食の席に選んだ上野水月ホテル『鴎外荘』。それから約1年後の2020年5月。めまぐるしく変化する観光宿泊業を取り巻く状況と、新型コロナ感染症蔓延のあおりを受けて惜しまれつつも閉業されたそうです。満開の桜と...
母と父

2018年の晩秋に79歳で母が逝去し、父の一人暮らしが始まりました。

ここ何年も闘病生活を続けていた母の最期は誰の目にも遠くはないことはわかっていたけれど、やはり長年連れ添ったパートナーを失うことは父にとって重たい物でした。

幸いにも、しばらくは次女である姉夫婦が実家に居てくれることが多かったので、急にしんみりとした雰囲気になることもなく、今まで母がため込んできた家業の雑務にそれぞれが追われるような日々が続きました。

子の立場から見れば血をわけた家族であるものの、夫婦は他人。

山あり谷あり、期待や諦め、葛藤の繰り返しを経て共に歩み続けた我が両親ですが、ふと父に「父にとって母とは?」と尋ねると「心の友だよ。」なんて、ジャイアンみたいなセリフ。

まぁ、でも夫婦なんてそんなもんかも知れないなと妙に納得。

セリフこそ父に譲ったものの、家の中でも外でもヒエラルキーの頂点にいないと気のすまない母の方が圧倒的ジャイアンであったのは紛れもない事実です。

母の弔事から間もないが

身内に不幸があった場合、一年間は喪中ということで祝い事などを避けることが一般的ではあるものの、喜寿と言えるタイミングはこの年しかないし、家族そろって酒を飲む機会もなかなかないしということで仏壇の母へ手を合わせ、行ってまいりました。

水月ホテル正面から入場して、ちょうど中庭といえる位置に木塀に囲まれた一画が現れます。

門扉をくぐった先の前庭は小さな池や橋があり、手入れも行き届いています。

なるべく人物が映りこまない写真を撮りたいと心がけているのですが、いかんせん個室の中でホスト役を務めているとなかなか思うように撮影できません。ぽんこつ以外が着席する個室「於母影(おもかげ)」の様子です。左手前に座る本日の主役は酒のオーダーを吟味しています。

本日のお品書き

祝い膳懐石コースの値段は失念しましたが、たぶん1~1.5万円程度だったと思います。

主役の父は数年前に大腸癌を患い、潰瘍性大腸炎(クローン病)であることも発覚したため、多少は良いのですが不水溶性の食物繊維を通常食のように摂ることが難しく、予め伝えておいたことで配慮された内容のものをいただきました。

振り返りの記事ですが、結構な品数あるようでワクワクしますねー。

では、いただきます。

祝い膳の前菜らしい伊勢海老の頭がどーんと乗っていますが、これは飾りです。

松笠新じゃが・竹形アスパラ生ハム・梅花熨斗梅とやはり慶事に欠かせない松竹梅をあしらった小品にお多福豆など、めでたさを連想する品ばかりです。

続きましてお椀です。木の芽が添えられた透けるほど薄い大根の下には蛤真薯、菜の花など春らしいお椀です。

お刺身は寿こんぶと鶴の形にした大根の飾り切り。春小鯛松皮作り・牡丹海老・鮪など、どれも仕込みがしっかりされていてとても美味しかったです。

うつわがかわいい。

温物としてフカヒレ餡のかかった茶わん蒸し。紅白の白玉の下には帆立、仙台麩が隠れていました。どこまでもめでたい。

焼き物は甘鯛若狭焼き、鮑雲丹焼き、焼蕪とたらの芽の天ぷら。豪華です。

煮物も金目鯛や竹の子、スナップ豌豆など春らしい。

和牛ステーキと新じゃがなどの焼き野菜。胡椒のきいた醤油ベースの餡がとても合いました。

そして、土鍋で炊きあげた鯛めし。もう、これがあるだけでお祝い!って感じになりますよね。

しじみの赤出汁、香の物と共に。鯛めし、とても美味しかったです。

水菓子はメロン、スイカ、イチゴとスターフルーツ。スターフルーツってサクサクした歯ごたえで南国の果物特有の香りがして結構好きですが、近所では手に入らない…。

ふー、満足!美味しかったしごちそうさまでした!

鴎外荘を探検!

食後、のんびり酒を飲みながら旧邸内をウロウロしましたが、別の個室で会食をされているお客さんや、建物の見学だけに訪れている方もけっこういらっしゃって、全体的に空間が把握できるような撮影はできませんでした。

個室「蔵の間」の入り口照明。もう、こんなデザインの照明なんかどこ行っても手に入れることは難しいんじゃないかしら。

「蔵の間」天井です。この個室は5、6名までのテーブル席でとてもこじんまりしていましたが、いつか小さい集まりなどで利用したいなぁと思ったほど素敵なプライベート空間でした。

「舞姫の間」縁側にあった目隠し用の衝立。三間つづきの大きなお座敷は鴎外直筆の書や写真なども飾ってありましたが訪問客が多かったので撮影を断念。

お祝いできた思い出

水月ホテルの閉業と共に公開が終わってしまった鴎外荘ですが、そんなことが近い未来に起こるとは夢にも思っていなかった2019年の春。

この後、上野公園を歩いて満開の桜と泥酔した酔っ払い、溢れんばかりのごみ箱を見学して帰りました。

美味しいもの食べ、いい気分で酔っ払い、母を弔いながら喜寿を祝った良い思い出です。

なかなか家族そろって食事に行けるタイミングも合わないけど、新型コロナ感染症がもう少し落ち着いたらみんなで一緒に出掛けましょう!

記載情報:2019年4月吉日

※水月ホテル及び鴎外荘は2020年5月末日をもって閉鎖しました。

コメント

タイトルとURLをコピーしました