フランスの食文化

文化の話
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どうも。

前回の更新から半年以上が経つでしょうか。2020年、世界中が新型コロナに翻弄され、自粛や自制を求める風潮から緩和ムードになりつつあるも外に出る気になれないぽんこつです。

流れや動きがないままそこに留まっていると、水でさえ腐ることは判っちゃいるもののジッとしていることに慣れてしまうと一歩が踏み出せなくなるものですね。

しかーし。精神的に腐れが進行していることはさすがにヤバイ。クサクサとしたやる気のない精神状態はどの角度から見てもよろしくないという訳でケツに鞭打って発信したいと思います。

今回はタイトルのとおり、フランスの食文化についてです。

昨年末より3か月ほど、必要があってフランス語を再学習するために飯田橋のアンスティチュフランセ(旧日仏学院)へ通っていましたが、そのカリキュラムの中に現地の文化を知るための授業が組まれていてフランスの産業や政治、教育から食文化など幅広く興味深い話をたくさん聴くことができました。

その中から、現代の日本国内におけるフランス料理のスタイルは置いといて、フランス料理の歴史や普段の食卓など、食文化について話を掘り下げてみたいと思います。

フランス料理の歴史

知る限り、その昔のフランスでは王侯貴族であっても皿やカトラリーも無く、カリカリに焼き上げたパンの上に肉を乗せ、手づかみで食するという何ともワイルドな食卓が当たり前であったとか。

これが中世の頃、イタリアよりフランスへと嫁いできたカトリーヌ・ドゥ・メディシス(メディチ家のお嬢さん)が引き連れてきたシェフ陣によってフランスの食文化は大きく変化し、ブルボン王朝やハプスブルク家から近隣の諸外国にもそれらが伝わったとのこと。このことから理解できるように、当時のフランス料理は貴族や特権階級のためのものでした。

料理を美味しく食べるためだけではなく、流通や保存事情の悪い時代に素材の質を保つという意味もあり、ソースはかなり濃厚だったと思われます。

宴会に明け暮れる毎日、今で言うところのパリピだった当時の王侯貴族にとって料理は贅と権力を誇示する道具であり、そのためフランス料理は飛躍的に発展していったそうですが、18世紀に入りフランス革命が起こると貴族たちは国を追われたり、処刑されるなどしてパリピ文化は終焉を迎えます。

その後、宮廷で貴族に雇われていた料理人たちにより町にレストランが開かれ、市民が楽しめる料理文化が生まれ、ロシア式のサービス法が取り入られたり、コース料理が体系化されたり、料理法が確立されたりと時を経て現在に至るそうです。ざっくりと。

パリピであった当時の王侯貴族たちによっての贅沢をいとわない料理への取り組みがあったからこそ、現代に生きる我々市民も美味しいものに出会えるわけで、もし、ぽんこつ自身が中世に生まれていたらと思うと…ちっとも楽しめず、貧しく苦い思いをしながら歯が欠けそうなほどカッチカチの固いパンを毎日食べていたんだろうなと感慨深いです。

食のイメージ

フランス料理のイメージはそれこそどこの国の人にとってもマチマチかと思いますが、ミシュランガイド三ツ星付きのグラン・メゾンや日本ではホテルやバンケットで行われる結婚式での豪華な食事などなど、少し華やかなイメージもあるかと思います。

現地へ行った際にはいわゆる有名店を予約して楽しみたいものです。が、フランス人は普段どんな食事を楽しんでいるのでしょうか。

超裕福層になってくると食事をとる場所や内容が大きく異なると思いますが、裕福層も一般的な家庭でも変わらない部分としては「食事を楽しむ」というところではないでしょうか。

「食事を楽しむ」というよりは「食事の時間を楽しむ」の方がイメージしやすいと思いますが、特に休日は誰かと共に食卓を囲み、あれこれとおしゃべりをしながら時間をかけて食事をすることがフランス人のスタイルのようです。

週末や休暇、家族との夕食にパートナーを招いたり、友達と和やかにホームパーティーをしたりと食事の時間はコミュニケーションの時間だそう。そして、外食については殆どしないそうです。

その大きな理由は値段が高いからの一言に尽きるようです。中には貴重な時間を利用して友達や家族に会うため、またはビジネスチャンスを得るためにお昼休みをカフェやレストランで過ごす方もいるそうですが、ランチであっても外食する人はとても少ないとのこと。

いわゆる社食やフードチケットの配布など福利厚生の一環でそんなサーヴィスを受けられるのは有名企業や一流企業でお勤めの方に限られた話だそうです。

日本のようにコンビニやファミレスがあるわけでもなく、朝早起きして彩りよい丁寧なお弁当を作る習慣もありませんから、バゲットにハムとチーズを挟んだだけのお弁当やテイクアウトのサンドイッチなどで済ませるのが一般的だとか。

朝食はというとバゲットにバターとジャムをのせたり、カフェオレやココアに浸して食べたり、ミューズリー(シリアル)にミルクやヨーグルトといたって質素で、クロワッサンは決まって週末ぐらいにしか食べない人も多いようです。

アメリカン・ブレックファストのように、調理した卵やソーセージ、ベーコンなど温かいものが出てくることはなく、いわゆるコンチネンタル・ブレックファストなんですね。

あくまでも、これはぽんこつリサーチによる回答結果をまとめたもので、そうではない方もいらっしゃるとは思いますが、朝と昼はかなり質素で普段の夕食にしたってスープとサラダとお惣菜屋のキッシュやハム、パテなど。ちょっと味気ないんじゃないかなとも思われるかもしれませんが、その分、休日の家族や友達、パートナーとの食事を楽しく豊かに過ごせるよう大切にしているんだそうです。

フランスで一番の美食の町とは?

さてさて、普段こんなに質素な食事で暮らしているフランス人ですが、なぜゆえ美食国家と言われ続けているのでしょうか。

まずは海に囲まれていること。フランスの西側は大西洋、南側には地中海と大きな漁場を持っています。2018年には北西に位置するイギリスとの間で「ホタテ戦争」と呼ばれた両国のホタテ漁場をめぐる争いなどもあったほど、水産資源が豊富にあるわけです。

そして、日本の約1.5倍の面積を誇るフランスは国土の50%以上が農用地であり、北から南へと寒暖の差も激しく、平地や山岳地帯と多様な風土を持つ地域が広がっていて農作物が豊かで酪農も盛んにおこなわれ、それらの輸出量も世界でもトップクラスといわれています。

「原産地呼称統制」や「地理的表示保護」と呼ばれるラベル認証制度も注目されていて国際競争の中で差別化を図る取り組みも盛んにおこなわれています。例えばシャンパーニュ地方で生産され、認証されたものでなければシャンパンと呼べない…などですね。

パリピ貴族たちの弛まぬ贅への追及があったこと、それぞれの地方の農産物から地域の特色を生かして作られた郷土料理や伝統料理が発展していったこと、それらを時代のニーズへ昇華させ続けたことが美食国家と呼ばれる所以であるのでしょう。

では、そんなフランスの中でも特に美食の町として名高い地域はどこでしょう。

もちろん、首都であるパリには各地方から様々な食材が流通してきますし、有名グラン・メゾンやレストラン、ビストロも軒を連ねています。が、フランス人が口をそろえて美食のメッカと呼ぶ町、それはローヌ・アルプ地方のリヨンです。

リヨン、美食の歴史

ブルゴーニュにもほど近く美味しいワインに恵まれていること、世界的にも名品と讃えられているブレス鶏の産地であること、川カマスや蛙、エスカルゴ、ザリガニ、チーズといった名産品も多く、バターや生クリーム、チーズをふんだんに使った古典的な手の込んだ料理が特徴とのことで、ぽんこつの食欲が刺激されます。

かつてリヨンは絹織物の交易で繁栄し、産業革命を迎える19世紀前半にはヨーロッパ最大の絹織物・繊維工業都市として大発展します。発展と共に町は労働者で賑わい、絹職人(カニュ)と呼ばれる男たちが仕事が終われば仲間と共に食事や酒を楽しむ場所として、ブションリヨネと呼ばれるリヨン独特の大衆食堂(ブション)が生まれました。

余談ですが世界遺産にも登録された日本の群馬県富岡製糸場も、リヨンから雇い入れた絹繊維技術職人によって技術を伝授され、当時全国から集められた女工さんたちが一連の技術習得後、また出身地に戻るなどしてその技術は各地域に伝播されたそうです。あゝ、野麦峠。

写真提供:富岡製糸場

しかし、第一次世界大戦によって多くの労働者を失ったリヨンの町は危機的な状況に見舞われます。なんとか今まで培ってきた食の文化を守り伝えたいと奮起したのが「メール・リヨネーズ」と呼ばれるリヨンのお母さんたちでした。

当時はまだ、リヨン料理と言えば控えめで気取らないお母さんの料理でしたが、更に磨きをかけ美味しい料理を作り続けてきたことで「メール・リヨネーズ」の一人、メール・ブラジェは1933年には女性として初めてミシュランガイドより三ツ星を獲得するに至ります。

そして、なんとこのメール・ブラジェこそ、あの世界の巨匠ポール・ボキューズの師匠にあたる方なんですね。

リヨン料理、食べてみたい!

そんなこんなで、フランス人の食へ対する様々な思いをざっくりと聞けることができましたのでこれはもう食べに行くしかないっつーことで、東京にあるおすすめリヨン料理のお店を訊ねると神楽坂の「ルグドゥノム・ブション・リヨネ」があげられました。

日本で初めてのリヨン人によるブションとして2007年神楽坂にオープンしたお店は、多くのフランス人も称賛しているとのこと。その一番の理由は現地でも自家製の腸詰やパテなどシャルキュトリー(加工肉)を作るお店が減っているのに、東京でそれを提供できるお店だということにあるそうです。

ぽんこつが特に食してみたいと思ったのは「クネル」というもの。これは、魚のすり身をグラタンに仕上げたようなもの…とのことで、確実に食べたことのない味だろうと想像が膨らみます。

早速予約して友人と3人で訪問したリポートはまた次回。

食べたままの感動を味わいたいので、あまり予備知識を入れず楽しみたいと思います!

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